アメリカのワクチン接種に対する取り組みはどうして違うの?社会の政策?お医者さんやママたちの意識?今回は新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野教授 齋藤昭彦先生。「予防接種の基礎知識とアメリカの小児科医とママとのワクチンに対する取り組みについて」をテーマにママ達の不安に答えていただきました。
日本でも集団予防の考え方はとても大切です。
補足説明
実際、ヒブ感染症は2013年に定期接種化されて以降、国内ではほとんど0に近く患者さんはいなくなりました。しかし、世界にこの菌がまだ存在しているためワクチン接種は続けられています。一方、天然痘という病気は世界から撲滅され、現在ではワクチン接種をする必要がなくなりました。
ワクチンを受けたくても受けれない人がいます。アメリカでは、集団予防の考え方が市民によく知れ渡っています。学校には、必要なワクチンを接種していないと入学できません。世界にはたくさんの感染症がありますが、ワクチンで予防できるものは意外と少ないです。予防できるものは予防する。一社会人の責任として、予防接種はしっかりと受けていきましょう。
一度にいくつかのワクチンを接種することで効果が変わったり、副反応が起こる頻度があがったりすることはありません。
補足説明
同時接種では、一度に多くの痛みを経験しますが、それ以外のデメリットはなく、むしろ早い時期にそれぞれの感染症にかかるリスクが減ったり、子どもたちやママたちの時間的な負担が少なくて済むなどメリットの方が多いです。いままでの世界の研究結果では、同時接種によりワクチンの効果が変わったり、副反応の頻度が上がることはないことも分かっています。ワクチンの種類も多くなっていますので、正しい知識を持って、安心してしっかりと接種していきましょう。
子どもたちが安心して予防接種ができる体制を作れるように、その声を代わりに伝えてあげる役割があります。毎年、接種に困らないようなワクチンスケジュールを作ること、接種が遅れてしまった子どもへの対応、ワクチン接種の後に起こる問題の評価などがあります。
補足説明
アメリカでは、発言力の弱い子どもたちの代わりに大人たちがその言葉を社会に伝えてあげるという考え方が社会にしっかりとあるようです。
例えば、このワクチンがないので取り入れて欲しい、こういう病気で困っています、など、小児科医は、子どもたちの立場からみた問題を先頭に立って社会に訴えていく役割を担っています。また、ワクチン接種は、安全なものですが、万が一、接種後に問題があった場合、保障制度が充実しています。国全体がワクチン接種に対して積極的に取り組んでいるようです。
新潟大学医学部 小児科教授
1991年新潟大学医学部卒業後、聖路加国際病院小児科を経て、1995年渡米。
Harbor UCLA メディカルセンター、南カルフォルニア大学(USC)小児科、カルフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)小児感染症科を経て、UCSD助教授に就任。2008年に帰国し、国立成育医療研究センター感染症科 医長、ワクチンセンター長などを歴任し、2011年より現職。
日本人として初めて、米国小児科学会認定の小児感染症専門医を取得した。米国での臨床医としての多岐にわたるご経験から、グローバルな視点で日本の予防接種制度の改革を行い、多くの小児科医に指導されている予防接種、小児感染症に関する第一人者の先生です。